大江戸。地球の衛星軌道上に浮かぶ、巨大な都市の名前です。
‥‥21世紀の中頃、ひとりの日本人宇宙探検家が偶然に、宇宙に漂う、とてつもなく大きな群島を発見しました。
これが、大江戸の土台となった<浮遊大陸>です。
この浮遊大陸の上には、人間を遙かに凌駕する知能の持ち主によって創られた、高度な文明の残骸が残されていました。
現代<古代人>と呼ばれている、謎の先住者たちです。
当時、地球では21世紀まで安定した体勢を築いてきた江戸幕府が、難題に苦しんでいました。急増する人口の問題でした。
地球江戸幕府は、この問題の解決策として、宇宙にコロニーを建設することを計画し、新たに発見された浮遊大陸が、コロニー建設の地として選ばれました。
30年の月日をかけてコロニーは建設され、数百万人の人達が移住を開始し、現代の大江戸の原形が造られていったのです。
‥‥やがて、コロニーの地下から、古代人達の残した奇妙な機械の破片が多数発掘されるようになり、古代人達の文明について熱心な研究が行われるようになりました。
当初、分かっていたことはあまりにわずかでした。古代人達は、数百万年ここに住み、ある時突然自らの築いたものを捨てこの浮遊大陸を去っていったこと。その技術レベルは、現代の人間達のそれを、今なお、はるかに超えるものであること。
学者達の誰一人、残された機械の破片の構造を、理解することはできなかったのです。
しかし、大江戸暦120年ごろ、武田星雲斎という学者が現れ、古代人の機械の破片をある法則に従って組み合わせると、不思議なパワーが発生することを発見しました。
以来、このパワーを活用して、有用な道具を造る技術が急速に発展しました。
星雲斎は、古代人の機械の破片を<メックパーツ>、パーツを組み合わせて造った道具を<メック>と命名しました。
この呼び名は、現在もそのまま使われています。
‥‥移住が完了して50年ほどたつと、コロニーには、地球と違った独自の文明が発達し始めていました。
それとともに、コロニーの独立と鎖国を唱える声も強まり、ついに大江戸暦62年、大江戸の長、徳川浮家は地球江戸幕府に独立を宣言。コロニーの名前を<大江戸>と改め、自ら初代将軍を名のるとともに、地球との交易を禁止しました。
以来、大江戸は地球と一切関わりを絶ち、全く自分たちだけの暮らしを続けてきました。巷では、地球の人類は滅亡したという噂もありますが、鎖国以来400年あまりを経た今、彼らには宇宙線も通信装置もなく、それを確かめる手段は、何一つ残されていなかったのです。
大江戸暦200年ごろまで、大江戸には内乱が絶えず、世相は騒然としていましたが、その後200年間、世は何事もなく平穏無事に過ぎていました。大江戸市民の誰ひとり思いもかけぬ危機が大江戸に迫っているなどと、考えるものはいませんでした。
‥‥大江戸暦435年。大江戸のはずれにある深川という田舎町で立派なサムライになるべく学校に通う一人の若者‥‥、つまりあなたも、まだ、自分を待っている大きな運命については、何もし知らないままだったのです。
--サムライメック冒険の手引より
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